城の石垣を意識してみると、
積んである石に違いがあることに気づきませんか?
たとえば、江戸城のように、
大きさの整った石で造られていたり、
大阪城のように、大きさがバラバラだけど隙間が少なく
積まれていたり、そうかと思えば、
自然の石をそのまま、器用に積んだような石垣だったり。
どうして、石に違いがあるんでしょうか。
そこには、安土城以降に石垣を使った
築城が増えたこと、石垣を組む技術が
向上していったことがうかがえます。
石垣には、大きく分けて
次の2種類の石を使ったものがあります。
・自然の石を使う石垣
・加工した石を使う石垣
加工した石を使う場合には、
さらに積み方によって分かれています。
まずは、石の種類による違いを、整理してみましょう。
自然石と加工石
1.自然の石を使ったもの
自然石を使う場合は、『野面積み』という
積み方になり、石の形を活かして積んでいきます。
石垣が崩れないよう、石の目を見ながら
積むため、高い技術が必要でした。
石と石の間に隙間ができるので、
排水性もよく、頑丈なのが特徴です。
その反面、敵が取りつきやすく、
高く積めないという弱点もありました。
自然石を使うので手間が掛らず、
鎌倉時代あたりから見られる石垣の積み方です。
安土城築城の際に石垣を請け負った、
『穴太衆(あのうしゅう)』と呼ばれる土木集団が有名で、
石垣造りの城が増えるにつれ、各地に技術が広まりました。
現在も穴太衆の技術って受け継がれているんです。
城の補修はもちろん、名神高速道路の
土台にも見ることができるんですよ。
ちなみに穴太衆が組んだ石垣を
『穴太積み』と呼ぶことがあります。
2.加工した石を使ったもの
加工した石のばあい、これも2種類に分類されます。
・打込み接ぎ(うちこみはぎ)
・切込み接ぎ(きりこみはぎ)
打込み接ぎは、石の表面やカドを削り、
自然石より密着性を高めたもので、
野面積みに比べると”高く積める”、
”見栄えが良い”といった特徴があります。
関ヶ原の戦い以降の城に見られます。
熊本城には『扇の勾配』と呼ばれる、
切込み接ぎで積まれた石垣がありました。
・切り込み接ぎ(きりこみはぎ)
切り込み接ぎは、石の形がほぼ一定の方形に整形された石で、
打込み接ぎよりも密着性に優れ、隙間を最小限にできる特徴があり、
整然と積まれた石垣は優美さがあります。
江戸時代初期以降の城に見られるようになります。
加工した石は弱点もありました。
排水性が悪いため、雨水などが溜まると、
水圧で石垣が中から壊れることもあったそうです。
そのため、適切に排水口を設置する必要がありました。
こうした使用する石の違いって、
どうしてできたんでしょうね。
その原因は二つ考えられると思います。
一つは、防御性を高めるため。
野面積みでは急な角度では積めず、
高くも積ない欠点がありました。
打込み接ぎを用いて高くすることで、
石垣に取りつきずらくすることが可能だからです。
もう一つは石の調達が不足してきたこと
石垣を使った築城が増えると、当然ながら
石の調達が不足してきます。
そうなると、遠くからもってこなければいけませんよね。
わざわざ遠くから自然石を調達しても、
合わない場合がでてきます。
さらに、自然石を組み合わせるには、
石の目を見る職人が必要になりますが、
そうした技術者も不足がちになります。
石を加工すれば、石を見る職人が不要になるため、
削って合わせたほうが合理的でもあったでしょう。
切り込み接ぎにいたっては、すでに戦乱の世も
終わりに近づいている時期ですから、
石切り場で加工して持ってくるほうが効率的です。
加工するなら、一定の規格に合わせたほうが、
作業も輸送も、工期も管理ができます。
まとめ
石垣の石の違いについて、大きく分けて2種類ありました。
自然石を使った石垣と、加工石を使った石垣です。
自然石は昔から使われている石垣で、
頑丈ですが、高く積めない欠点もありました。
加工石は高く積めますが、
排水が不十分だと崩れてしまう恐れがありました。
時代が下がるにつれて、自然石の石垣から
加工石の石垣が多様されるようになっていきます。
石の調達や、技術者の不足もあって
移り変わってきた可能性が考えられます。
石垣に使われる石一つからでも、
当時の政治事情が伺えそうですね。
自然石については『野面積み』が一般的ですが、
加工石については、積み方が多様になってきます。