天守、櫓、塀に仕掛けられた工夫

内側から狭間
お城に行った時、細かいところまで見ていますか?

つい天守や櫓に目を奪われてしまうけど、
細かいところにも工夫が凝らされていて、
興味深いですね。

現存していたり、ちゃんと復元されている城だと、
見栄えの良い平和的な城の姿だけじゃなく、
守りに知恵を尽くした姿が垣間見えますよね。

攻防のなかで、
どんな工夫を城に施していったのでしょうか?

侵入されたら止める工夫

城に寄せ手が侵入した場合、
少しでも進攻を遅らせる必要があります。

そのとき、寄せ手数も減らせれば御の字ですよね。

そこで、塀をめぐらして、まっすぐに本丸へ
たどり着けないよう工夫をし、
壁に開けられた狭間(さま)と呼ばれる穴から、
鉄砲や弓矢などで攻撃を仕掛けました。

狭間は、枡形虎口(ますがたこぐち)や、
それぞれの櫓、塀にかならずといっていいほど
設けられます。

そして、正面から見た形状はいろいろとありますが、
断面で見ると、内側に向かって広がるのが
共通しています。

その広がりは、角度をつけて狙えるような
工夫をしているんです。

狭間の正面から見た形状
・円形・三角形・正角形
鉄砲を突き出して使う狭間で、開口は狭くなっています。

・長方形
縦長の長方形になっていて、弓矢を通すための狭間です。

それにしても、弓矢用の狭間は、
下手したら狭間を通っていくかわからないくらい
幅が狭いですね。

現在の弓道とは違え、当時は「打ち切り」といって、
弓を回しきらない射かたをしますが、
狭間を通すには、相当な技術が必要に思えます。

そして、実際に穴を覗いてみると、名前の通り狭いです。

穴があいている範囲しか見えないので、
”狙っている間に走り抜けてしまうんじゃないか?”
と思うくらいです。

そのため、狙いを定めやすくする、横矢掛りとか、
枡形虎口のような、相手の足を止める工夫もあります。

壁の向こうから狙われるなんて、嫌な工夫ですよね。

でも、狭間にも弱点があります。

それは、穴が開いているのが分かるため、
死角に身を隠されたり、外からふさがれることです。

そうすると狙うこともできません。

そこで、相手側の壁を漆喰で薄く塗り固め、
必要な時に破って使う”隠し狭間(かくしさま)”
考え出されました。

何にもないと思っていた壁から、
鉄砲が顔をだしたら、相当焦ると思います。

狭間のほかに、石垣に取りついた敵を
追い落とすために、”武者返し”や、
”石落とし”といった工夫もされました。

石垣は、積み重ねた石と石の隙間ができやすく、
特に角になる”端から登りやすい”という弱点があります。

武者返しは、石垣の傾斜が上になるほど
急になる造りで、一番上だと、ほぼ直角になります。
熊本城の清正石垣が有名ですね。

石落としは、石垣ギリギリに建てた櫓や天守の、
数十センチ張り出だせた小部屋の床から、
下に向けて石などを落として追い落とす工夫です。

このころの鉄砲は、前から弾を込める方式なので、
下に向かって使うには不向きです。

そのため、原始的ですが、実用的な石を落としました。

ほかにも、壁を乗り越えたり、
石垣を上りつめてきた寄せ手が天守に取り付けないよう、
”忍び返し”と呼ばれる工夫もあります。

忍び返しには二通りあり、
ひとつは、軒先に槍の穂先を並べて取り付けたもの、
もうひとつは、天守の床を石垣から張り出させ、
物理的に入り込めないようにしたもの
です。

高床式住居の「ネズミ返し」と同じ構造ですね。

忍び返しは、常に設置されているものなので、
諜報活動をする”忍者”の侵入を
阻むものとして設置されました。

特に槍の穂先を並べた忍び返しは、
今でも不審者が塀を乗り越えて入れないようにする
商品として、”忍び返し”の名で売られています。

あれを見たら、忍び込もうとは思わないでしょう。

これらの設備は、近代城郭にしかない設備もあり、
時代の変化と共に進化してきた工夫でもありました。

寄せ手側の工夫

寄せ手側も、工夫を凝らしています。

深い堀があれば、土を埋めて進みやすくしますし、
板塀程度なら、縄をつけたカギ爪でひっかけ、
引き倒して進みます。

時には、塹壕(ざんごう)を掘って弓矢、
鉄砲から身を隠し、トンネルを掘って敵の城に
入り込んだり、建物を崩壊させることも考えらえました。

塹壕を掘れない場合でも、土を入れた俵や木板を
前面に立てて、弓矢や鉄砲から身をまもりました。

ただし、寄せ手としては、城に入るまでに時間がかかり、
入ったとしても被害は小さくないため、
できるかぎり城攻めをしないで済むよう、
計略による城攻めが工夫されました。

まとめ

各地で復元が進んでいる城ですが、細かいところに
目を落とすと、守る側の工夫が見て取れます。

壁を挟んで攻撃を加える狭間(さま)や、
石垣にとりつく寄せ手を落とす石落とし、
平時でも諜報活動させないための”忍び返し”など。

寄せ手側も、地味な戦法ですが、塹壕掘りや
盾を使って攻め込みます。

ですが、守りが堅いと力押しもままなりません。

寄せ手が攻め込むのを断念するように備えるのも、
城の役割なのかもしれませんね。

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